胸焼け(喉のつかえ感)とは
「胸焼け」とは、みぞおちの上あたりがジリジリと焼けるように感じたり、ヒリヒリとしみるような不快感が生じる症状を指します。これは、食べ過ぎや飲み過ぎによる「むかつき」や「胃もたれ」とは異なります。
通常、食道と胃の境目にある下部食道括約筋(噴門部の筋肉)は、飲食時を除いてしっかりと閉じており、胃酸が食道へ逆流するのを防いでいます。しかし、何らかの理由でこの筋肉の働きが弱まると、胃酸が食道内に戻りやすくなります。胃の粘膜は粘液によって胃酸から保護されていますが、食道の粘膜にはその防御機能が十分でないため、逆流した胃酸の刺激によって胸焼けが引き起こされます。
胸焼け・喉のつかえ感の典型的な症状には、
以下のようなものがあります。
- 胸が熱い
- 胸の中央が焼けるような痛みや不快感
- ⾷後に酸っぱいものがこみ上げる感じ
- 喉の違和感や声のかすれ
- 変な咳が出る
- 慢性的な咳やのどの痛み
- 胸のつかえ、熱い感じ
- 喉に違和感(ヒリヒリなど)がある
- げっぷの回数が多い
- 胃が張る
胸焼け(喉のつかえ感)の主な原因
食事内容
胸焼けの大きな要因の一つが食事の影響です。
特に脂っこい食事は、消化に時間がかかることで胃酸の分泌を増やし、胃に負担をかけやすくなります。揚げ物やバターを多く含む料理は、胃の滞留時間が長くなり、胃酸の逆流を助長するため、注意が必要です。
また、刺激の強い食べ物(唐辛子やカレー、酢や柑橘類など)も、食道や胃の粘膜を直接刺激し、胸焼けを引き起こしやすくなります。特に、胃酸が多く分泌されている状態でこれらを摂取すると、食道の違和感や灼熱感が強くなることがあります。
カフェインやアルコールの摂取も胸焼けの原因になります。コーヒーや紅茶、チョコレートに含まれるカフェイン、そしてアルコールは、食道と胃の境目にある下部食道括約筋を緩める作用があり、胃酸が逆流しやすくなります。そのため、これらの飲み物を頻繁に摂取、飲み過ぎたりすると胸焼けのリスクが高まります。
食べ過ぎ、早食い
食べ過ぎや早食いは、胃の負担を増やし、胃酸の逆流を引き起こしやすくなるため、胸焼けの主な原因です。
食べ過ぎによる影響
大量に食べると胃が大きく膨らみ、内圧が高まることで、胃酸が食道へ逆流しやすくなります。
特に脂っこい食事や炭酸飲料と組み合わせると、胃の滞留時間が長くなり、胸焼けのリスクがさらに高まります。
早食いによる影響
よく噛まずに食べると、食べ物が大きなまま胃に送られるため、消化に時間がかかります。
その結果、胃酸の分泌が過剰になり、食道へ逆流しやすくなります。また、急激に食べることで胃の膨張も早まり、内圧の上昇に繋がることも影響します。
生活習慣の影響
生活習慣の乱れは、胃酸の逆流を促し、胸焼けを引き起こす要因です。
肥満
お腹周りに脂肪がつくと、胃が圧迫され、胃酸が食道へ逆流しやすくなります。
特に食後に胃の内圧が高まると、胸焼けの症状が悪化しやすくなります。
喫煙
タバコに含まれるニコチンは、食道と胃の境目にある下部食道括約筋を緩めるため、胃酸の逆流を助長します。
また、喫煙は胃の粘膜を傷つけ、胃酸の影響を受けやすくするため、胸焼けを悪化させる要因にもなります。
ストレス
ストレスが続くと自律神経が乱れ、胃酸の分泌が過剰になりやすくなります。そ
の結果、胃の負担が増し、食道への逆流が起こりやすくなります。
前かがみの姿勢、座り仕事が多い人や猫背の姿勢が続くと、胃が圧迫され、胃酸の逆流を促すことがあります。
「喉がつかえる感じ」にご注意
特に下記のような症状はございませんか?
- 喉に違和感を覚える
- 何かが詰まっているように感じる
- つばや食べ物が飲み込みにくい
- 喉や口の中に酸味を感じる
このような症状が続く場合、消化器系の疾患を疑う必要があります。
特に、近年増加している逆流性食道炎や、その一種である咽喉頭逆流症が関与している可能性があります。
咽喉頭逆流症
咽喉頭逆流症は断が難しく、見逃されやすい疾患です。胃カメラ検査が有効な診断方法とされていますが、適切な検査を受けられず、長期間悩んでいる方も少なくありません。
また、逆流性食道炎ではないのに、その治療を受けても症状が改善しないケースもあります。正確な診断を受けることで、適切な治療に繋がるため、症状が続く場合は専門医に相談することが大切です。
胸焼け(喉のつかえ感)で
考えられる疾患
胸焼けは胃酸の逆流や胃の不調が関係していることが多く、以下のような疾患が考えられます。
咽喉頭逆流症(LPR)
胃酸が食道を越えて喉や声帯まで逆流する疾患で、逆流性食道炎の一種です。
症状
喉の違和感、声のかすれ、慢性的な咳、胸焼けを感じないことも
食道裂孔ヘルニア
胃の一部が横隔膜を越えて食道側に飛び出す状態で、胃酸の逆流を助長します。
症状
胸焼け、食後の胃もたれ、呑酸、食道の圧迫感
胃・十二指腸潰瘍
胃酸が胃や十二指腸の粘膜を傷つけ、炎症や潰瘍を形成する疾患です。
症状
空腹時や夜間の胸焼け、胃痛、吐き気
心疾患
(狭心症・心筋梗塞)
胸焼けに似た症状が現れることがあるため注意が必要です。
症状
胸の痛み・圧迫感、息苦しさ、左腕や背中の痛み
危険サイン
運動時やストレス時に症状が出る、冷や汗を伴う場合は要注意
胸焼け・喉のつかえ感に対する
胃カメラ検査の有効性
胃カメラ検査は、胸焼けの原因を正確に診断するために有効な検査です。
特に、逆流性食道炎や胃・食道の疾患を早期に発見できるため、胸焼けの症状が長く続く場合には受診を検討することが推奨されます。
胃カメラ検査のメリット
確実な診断が可能
症状だけでは判断しづらい疾患の有無を直接観察できる。
早期発見・早期治療に繋がる
逆流性食道炎が進行すると、バレット食道や食道がんのリスクが高まるため、早期診断が重要。
ピロリ菌検査が同時に可能
ピロリ菌感染は胃がんのリスク因子のため、関連疾患のチェックにも役立つ。
治療方針の決定に貢献
症状に応じた適切な薬(胃酸抑制剤など)の処方が可能。
胸焼けの症状で胃カメラ検査を受けるべき人
- 胸焼けが長期間続く
(数週間以上) - 市販薬を試しても改善しない
- 食事のたびに胸焼けや呑酸を感じる
- 喉の違和感や声のかすれがある
- 胃の痛みや不快感、吐き気を伴う
- 家族に胃がんや食道がんの既往がある
胸焼け(喉のつかえ感)の対策・予防法
胸焼けは、胃酸の逆流を防ぐ生活習慣や食事の工夫で予防・改善できます。
特に、食生活の見直しや姿勢、ストレス管理が重要です。
食事習慣の改善
食べ過ぎを避ける
一度に大量に食べると胃が拡張し、胃酸の逆流を引き起こしやすくなります。
腹八分目を意識し、ゆっくりよく噛んで食べましょう。
就寝前の食事を控える
食後すぐに横になると、胃酸が逆流しやすくなります。
食事は就寝の3時間前までに済ませるのが理想的。
刺激物を控える
辛いもの、酸味の強いもの、脂っこい食事は胃酸分泌を促し、逆流を悪化させる可能性があります。
香辛料、揚げ物、柑橘類、炭酸飲料、カフェイン、アルコールを控える。
胃に優しい食事を選ぶ
| 役割 | 食品 |
|---|---|
| 消化の良い食品 | 白米、お粥、うどん、豆腐 |
| 胃を守る食品 | キャベツ、じゃがいも、バナナ |
| 脂質の少ないタンパク源 | 鶏ささみ、白身魚、卵 |
生活習慣の改善
食後すぐに横にならない
食後はしばらく座るか、上体を少し起こして過ごすことで逆流を防げます。
適度な運動を取り入れる
軽いウォーキングは消化を助け、胃の負担を減らします。
姿勢に注意する
前かがみの姿勢を続けると、腹圧がかかり胃酸が逆流しやすくなります。
座るときは背筋を伸ばし、猫背にならないよう意識しましょう。
禁煙
喫煙は下部食道括約筋を緩め、胃酸が逆流しやすくなります。
胸焼けが起こったときの対策
水や牛乳を飲む
胃酸を中和し、食道への刺激を和らげる効果があります。
ただし、牛乳は脂肪分が多いと胃酸の分泌を促すため、低脂肪乳が◎。
ガムを噛む
唾液の分泌を促進し、胃酸を洗い流すのを助けます。
上体を高くして休む
ベッドの上半身を少し高くすることで、胃酸の逆流を防ぐことができます。
薬を活用する
- 制酸剤
(胃酸を中和する) - H2ブロッカー
(胃酸分泌を抑える) - PPI(プロトンポンプ阻害薬)
(胃酸の分泌を強力に抑制)
※頻繁に胸焼けが起こる場合は、早期に医師に相談しましょう。
よくある質問(Q&A)
胸焼けと胃もたれの違いは何ですか?
胸焼けは、胃酸や胃内容物が食道へ逆流して「焼ける」「熱い」「酸っぱさが上がる(呑酸)」といった不快感が胸の奥や喉に生じる症状です。原因は“逆流(GERD/LPR)”が中心です。胃もたれは、食後の上腹部の重さ・張り・食物が残る感じなどで、胃の運動低下や消化遅延(機能性ディスペプシア、慢性胃炎など)によることが多く原因が異なります。両症状は同時に起こることもあるため、原因を見極めるには消化器内科での評価が必要となります。
胃酸過多になる原因は何ですか?
嚥下時以外に下部食道括約筋がゆるむ「一過性弛緩」や括約筋機能低下、食道裂孔ヘルニア、肥満・妊娠・前屈み姿勢・きつい衣服など腹圧上昇、脂っこい食事・過食・就寝前の飲食、アルコール・喫煙、睡眠不足やストレス、便秘、遅い夕食、そして一部の薬剤(例:一部の降圧薬や抗コリン薬 等)が関与しています。詳しい原因については問診、診察、検査を踏まえて判断していきます。
胸焼けに効く市販薬はありますか?
市販で選べるのは制酸薬(酸を中和)、アルギン酸製剤(逆流バリア形成)、H2ブロッカー(酸分泌を抑制)などです。症状が軽い一過性の胸焼けなら一時的な緩和が期待できますが、繰り返す・数日で改善しない・夜間や起床時に強い・嚥下時痛や体重減少、黒色便・吐血がある場合は自己判断を続けず受診してください。処方薬(PPI/P-CAB など)や生活指導を含めた治療が必要となることがあります。
喉のつかえ感は自律神経が原因ですか?
喉のつかえ感(咽喉頭異常感)は、器質的異常がなくてもストレスや自律神経の乱れ、咽頭・頸部筋の緊張で増悪します。また、胃酸の微小逆流(咽喉頭逆流症:LPR)、アレルギー性鼻炎・後鼻漏、甲状腺疾患、食道運動異常、頸椎の変化など多因子で生じます。まず消化器内科で、逆流や器質疾患の有無を評価し、必要に応じて生活指導・薬物療法を行います。
胸焼けの受診目安はありますか?
①週に2回以上続く、②市販薬で数日たっても改善しない、③就寝中や起床時に強い、④嚥下時の痛み・つかえ、⑤体重減少・貧血・黒色便・吐血・持続する咳や嗄声などがあれば早めの受診を推奨します。逆流性食道炎や機能性ディスペプシアのほか、食道がん・胃潰瘍などの重篤な疾患が隠れていることがあるため、胃カメラ検査で原因を確認します。
喉のつかえ感があるときは受診したほうがいいですか?
はい。多くは良性ですが、飲み込みにくい(嚥下困難)・体重減少・声がれ・長引く咳・血痰などを伴う場合や、症状が持続・増悪する場合は必ず受診してください。咽喉頭逆流症(LPR)や食道疾患、甲状腺疾患などの診断が必要です。当院では症状に応じて胃カメラ検査を実施して評価していきます。
喉のつかえ感は食道がんの初期症状ですか?
初期の食道がんは無症状のことがほとんどです。進行とともに飲食時のつかえ・胸の違和感・体重減少・胸背部痛・咳・嗄声などが出現します。つかえ感が長く続く、増悪する、固形物が飲みにくくなるといった場合は、早めに消化器内科での評価(胃カメラ検査)を受けてください。
喉のつかえ感と詰まる感じの違いを教えてください。
「つかえ感」は喉や胸の奥の異物感・締め付け感で、検査で異常が見つからない機能的要因(咽喉頭異常感、LPR、ストレスなど)も少なくありません。「詰まる(嚥下困難)」は実際に食べ物や水分が通りにくい状態で、食道がん、食道炎・狭窄、運動障害など器質的疾患の可能性があります。特に固形物→流動物へと段階的に悪化する場合は注意が必要です。受診のうえ、必要に応じて胃カメラ検査で精査していきます。
