逆流性食道炎とは
逆流性食道炎とは、胃の中にある酸性の液体や食物が逆流して食道に入り込み、その内壁に炎症を引き起こす状態を指します。通常、短い間に起こる逆流は健康な人にも見られますが、逆流が頻繁または長時間続くと、食道の粘膜が刺激され、胸焼けや喉の違和感、痛みといった症状が現れることがあります。
特に中高年や高齢者に多く見られ、症状が継続する場合は、医療機関での適切な診断と治療が重要です。
逆流性食道炎の症状
逆流性食道炎は、胃酸や消化液が食道に逆流することで引き起こされ、以下のような症状が見られます。
逆流感
酸っぱい、または苦い液体が喉や口に上がってくる感じがする場合があります。
嚥下困難
食べ物や飲み物を飲み込む際に違和感や痛みを感じることがあります。
喉の痛みや違和感
逆流した胃酸が喉に刺激を与えるため、のどの痛み、違和感、または嗄声（かすれ声）が生じることがあります。
慢性的な咳や呼吸音の異常
胃酸が気道に達すると、慢性的な咳や息を吸ったり吐いたりすると、呼吸音に異常な音が聞こえることがあります。
逆流性食道炎に
なりやすい人
肥満の方
体重が多いと腹部に余分な圧力がかかり、胃酸が食道に逆流しやすくなります。
食生活に偏りがある方
脂っこいものや辛いもの、カフェイン、チョコレートなど、胃酸の分泌を刺激する食品をよく摂る人はリスクが高くなります。
飲酒や喫煙をする方
お酒やタバコは、胃酸の逆流を抑える役割をする下部食道括約筋の働きを弱めるため、逆流性食道炎を引き起こしやすくなります。
食後すぐに横になる習慣が
ある方
食事直後に横になると、重力の働きがなくなり、胃酸が食道に逆流しやすくなります。
長時間前かがみの姿勢を
とる人や、背中が丸くなっている人
胃に圧力がかかり、腹部内の負担が増すことで逆流しやすくなります。
逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎は、胃酸や消化液が食道に逆流し、食道の内側を刺激することで起こる炎症です。主な原因は以下の通りです。
腹部内圧の上昇
肥満、過食、早食い、または食後すぐに横になる習慣などにより、胃内の圧力が高まると、胃酸が食道へ押し出されやすくなります。
特定の食品や飲み物の摂取
脂肪分が多い食事、アルコール、カフェイン、炭酸飲料などは、胃酸の分泌を増やし、また下部食道括約筋の機能が低下し、胃と食道の境界にある筋肉が十分に締まらない症状が起き、胃酸が逆流しやすくなります。
喫煙
タバコは、消化器系の働きに影響を与え、胃酸の逆流リスクを高めます。
その他の要因
妊娠中や食道裂孔ヘルニアといった状態も、胃酸が逆流しやすい状況を作り出すことがあります。
逆流性食道炎の
検査・診断
逆流性食道炎の診断は、まず問診で患者さんの症状、既往歴、生活習慣などを詳しく伺い、現状の状態を把握することから始まります。
その後、胃カメラ検査を用いて、食道や胃の粘膜の状態を直接観察します。この検査では、胃酸の逆流によって引き起こされる炎症や潰瘍、または食道裂孔ヘルニアの有無など、胃酸逆流による具体的な影響を確認することが可能です。
これらの情報を総合して、正確な診断と適切な治療計画が立てられます。
逆流性食道炎の治療
逆流性食道炎の治療は、主に薬の使用と日常生活や食事の見直しによって行われます。
薬物療法
この病気の治療では、まず胃酸の分泌を抑える薬剤が使われます。
さらに、食道や胃の働きを正常に整える薬、そして食道の粘膜を保護するための薬も併用し、症状の改善を図ります。
生活習慣と食事内容の改善
再発を防ぐためには、原因となりやすい生活習慣や食事の内容を見直すことが大切です。
たとえば、脂肪分が多い食品や胃酸の分泌を促す食べ物は避けるようにし、食後すぐに横になる習慣は控えましょう。また、腹部に圧力をかけるような服装やベルトの着用も避けると効果的です。
逆流性食道炎の予防
食事の工夫
一度に大量に食べず、適量を心がけます。脂肪分や刺激の強い食品（辛い料理、カフェイン、アルコールなど）は控え、よく噛んでゆっくりと食べることが大切です。
食後の過ごし方
食事直後に横になることは避け、最低でも2～3時間は座ったり軽く歩いたりすることで、胃酸の逆流を抑えられます。また、就寝前には食事を済ませ、必要に応じて枕などで頭を少し高くすると良いでしょう。
体重管理
肥満は腹部に余分な圧力をかけ、胃酸の逆流を助長します。健康的な体重を維持することが予防に繋がります。
禁煙と節酒
タバコは下部食道括約筋の機能を低下させ、アルコールは胃酸の分泌を増やすため、これらの習慣を見直すことが効果的です。
逆流性食道炎に関するQ&A
逆流性食道炎があると口臭が悪化することがありますか？
はい、逆流性食道炎による胃酸の逆流が口臭の原因になることがあります。
- 胃酸の臭いが口に上がってくる
- 食道の炎症によって細菌が増殖しやすくなる
- 口腔内が乾燥し、唾液の分泌が減少する（唾液には口臭を抑える働きがある）
口臭が気になる場合は、胃酸逆流を防ぐための治療に加えて、こまめな水分補給や口腔ケアを心がけると改善しやすくなります。
逆流性食道炎は完治するのでしょうか？
逆流性食道炎は適切な治療と生活習慣の改善を行えば、多くの場合、症状をコントロールし改善できます。しかし、再発しやすい病気でもあるため、完治というよりは、うまく付き合っていく病気という考え方が大切です。
軽度の場合は薬物療法（胃酸抑制薬）や食生活の見直しで症状がなくなることもありますが、肥満や食道裂孔ヘルニアが原因の場合は、症状をコントロールし続ける必要があるため、医師の指導のもとで治療を継続しましょう。
逆流性食道炎は市販薬（ガスター10など）で治りますか？
市販薬（ガスター10などのH2ブロッカー）で症状が軽減することはありますが、根本的な治療にはなりません。
市販薬で改善が期待できるケース
- 症状が軽度で一時的な場合
- ストレスや暴飲暴食など、一時的な要因で胃酸の分泌が増えている場合
市販薬では対応が難しいケース
- 慢性的な逆流性食道炎（再発を繰り返す場合）
- 食道粘膜に炎症が強くある場合（食道潰瘍が疑われる）
- 症状が長引いている場合（2週間以上続く）
市販薬で症状が改善しない場合は、早めに医療機関を受診し、プロトンポンプ阻害薬（PPI）などのより強力な胃酸抑制薬を処方してもらうことをお勧めします
逆流性食道炎はほっといても大丈夫？
放置すると悪化するリスクが高いため、ほっといてはいけません。
軽度の逆流性食道炎でも、放置すると食道の炎症が進行し、以下の合併症を引き起こす可能性があります。
逆流性食道炎を放置すると起こりうる合併症
- 食道潰瘍（食道粘膜に傷ができ、痛みや出血のリスクがある）
- 食道狭窄（きょうさく）（炎症を繰り返すことで食道が狭くなり、食べ物が通りにくくなる）
- バレット食道（食道粘膜が変性し、食道がんのリスクが高まる）
症状が軽くても、定期的に医師の診察を受け、適切な治療を行うことが重要です。
逆流性食道炎でやってはいけないことは？
逆流性食道炎を悪化させる行動は避けましょう。
逆流性食道炎を悪化させるNG行動
- 食後すぐに横になる → 胃酸が逆流しやすくなる
- 暴飲暴食・早食い → 胃に負担をかけ、胃酸の分泌を促進
- 脂っこいもの・辛いもの・カフェイン・アルコールを摂る → 胃酸を増やし、逆流を助長
- タバコを吸う → 下部食道括約筋（LES）の働きを低下させる
- 締め付けの強い服を着る → 腹圧が上がり、胃酸の逆流を促す
- ストレスを放置する → 自律神経が乱れ、胃酸分泌が過剰に
- 夜遅くに食事をとる → 胃が消化しきれないまま寝ると、逆流が起こりやすい
対策としてできること
- 食後2〜3時間は横にならない
- 少量ずつ、よく噛んでゆっくり食べる
- 寝るときは頭を少し高くする（上半身を15〜30度傾ける）
- カフェインやアルコール、脂っこい食事や刺激物を控え、消化の良いものを食べる
- 適度な運動やストレス管理を取り入れる
適切な生活習慣を心がけることで、逆流性食道炎の症状を改善し、再発を防ぐことができます。
