- 萎縮性胃炎(慢性胃炎)とは
- 萎縮性胃炎(慢性胃炎)の症状
- 萎縮性胃炎(慢性胃炎)の原因
- 萎縮性胃炎(慢性胃炎)の検査・診断
- 萎縮性胃炎(慢性胃炎)の治療
- 萎縮性胃炎(慢性胃炎)を
発症した際の食事 - 萎縮性胃炎に関するQ&A
萎縮性胃炎
(慢性胃炎)とは
萎縮性胃炎(慢性胃炎)は、主にピロリ菌感染によって引き起こされ、胃の内壁が徐々に薄くなり、慢性的な炎症が続く病気です。ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜が傷つき、胃の防御機能が低下し、炎症が進行します。特に幼少期に感染するケースが多く、日本では中高年層の感染率が高いとされています。
多くの人は自覚症状が少なく、無症状のまま進行することが多いですが、胃の痛みや胃もたれ、食欲低下、膨満感などが現れることもあります。長期間この状態が続くと、胃粘膜の萎縮が進み、胃がんのリスクが高まることが知られています。
萎縮性胃炎と
慢性胃炎の関係
慢性胃炎の約80%は萎縮性胃炎に分類され、一般的に「慢性胃炎」と診断される場合は、萎縮性胃炎を指すことが多いです。
また、自己免疫性胃炎(A型胃炎)という別のタイプの慢性胃炎もあり、これは体の免疫機能が誤って胃粘膜を攻撃することで発症します。自己免疫性胃炎は稀とされていましたが、近年では増加傾向にあります。
萎縮性胃炎
(慢性胃炎)の症状

萎縮性胃炎は、胃粘膜が薄くなり、胃酸の分泌が低下することで消化機能が低下し、様々な症状を引き起こします。
主な症状
- 胃もたれ
(食後に胃が重く感じる) - 食後のムカムカ
(吐き気に似た不快感) - 腹部の張り
(ガスが溜まりやすい) - 胸焼け
(胃酸の逆流による不快感) - 食欲不振
(胃の機能低下による) - 吐き気
(胃の炎症による刺激) - 胃の痛み
(特に上腹部の鈍痛)
萎縮性胃炎(慢性胃炎)
の原因
萎縮性胃炎(慢性胃炎)の原因の大半は、ピロリ菌という細菌の感染が原因とされています。この菌は胃の粘膜に定着し、粘液の分泌を低下させるため、胃の壁が傷つきやすくなり、炎症を引き起こします。結果として、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、さらには胃がんのリスクが高まることが知られています。
ピロリ菌感染
ピロリ菌は胃の粘膜に定着し、胃の防御機能を低下させ、慢性的な炎症を引き起こす細菌です。
感染経路は完全には解明されていませんが、幼少期に不衛生な水や食べ物を介して感染することが多いと考えられています。
若年層の感染率は低下していますが、上下水道が未整備だった時代に育った60代以上では感染率が60%以上に達すると言われています。
自己免疫性胃炎
(A型胃炎)
自己免疫性胃炎は、免疫系が誤って胃の細胞を攻撃することで発症します。
胃の粘膜が萎縮するだけでなく、貧血や甲状腺の異常を伴うこともあります。
ピロリ菌感染とは異なり、遺伝的な要因が影響すると考えられています
萎縮性胃炎(慢性胃炎)
の検査・診断
下記の検査を組み合わせることで、萎縮性胃炎の正確な診断が可能です。
血液検査
ペプシノーゲンの値(萎縮の進行度を調べる指標)やピロリ菌の有無などを測定し、補助的な判断材料とします。
萎縮性胃炎
(慢性胃炎)の治療
萎縮性胃炎(慢性胃炎)の治療は、原因の解消や炎症の進行抑制、胃がんリスクの低減を目指して行われます。
ピロリ菌の除菌治療
抗菌薬と胃酸抑制薬を組み合わせて1週間程度の除菌療法を行います。除菌成功後は胃粘膜の炎症が改善することが多いですが、完全に元の状態に戻るわけではないため、定期的な経過観察が必要です。
生活習慣の改善と
定期検診
- 食生活の見直し
(脂肪分や刺激物を控える) - 禁煙・節酒
(胃粘膜の保護) - 適度な運動と体重管理
萎縮性胃炎(慢性胃炎)
を発症した際の食事
胃に負担をかけない食事を心がけることで、症状の悪化を防ぐことが可能です。
胃に優しい食品を選ぶ

おかゆ、うどん、スープ、白身魚、卵など、消化しやすく胃への負担が少ない食材を優先しましょう。
少量ずつ時間を空けて摂る
一度に大量の食事をとるのではなく、回数を増やして少しずつ食べることで、胃の働きを助けることができます。
よく噛んでゆっくり食べる
十分に噛むことで、消化がスムーズになり、胃への負担が軽減されます。
刺激の少ない食品を選ぶ
辛いものや強い刺激を持つ食材、またはアルコールやカフェインは控えめにすることが望ましいです。
適量の水分補給
喉が渇いた時にはこまめに水分を摂りましょう。ただし、一度に大量に飲むのではなく、適量を心がけてください。
自分の体調に合わせた食事を
個々の胃の状態や食材に対する耐性は異なるため、自分に合った食事内容を選ぶことが大切です。
萎縮性胃炎に関するQ&A
萎縮性胃炎の発がん率は?
萎縮性胃炎は胃がんのリスクを高める病気ですが、発がん率は萎縮の程度やピロリ菌の有無によって異なります。
ピロリ菌が陽性で萎縮性胃炎が進行している場合
ピロリ菌感染が続くと、慢性的な炎症により胃の粘膜がダメージを受け、胃がんのリスクが5〜10倍以上に上昇するとされています。
特に、高度な萎縮が進んでいる場合は発がんリスクが高いため、定期的な胃カメラ検査が推奨されます。
ピロリ菌除菌後の発がん率
ピロリ菌を除菌すると胃がんのリスクは低下しますが、完全にゼロにはなりません。
除菌後も胃粘膜の変化が残るため、年間1〜2%程度の確率で胃がんが発生することが報告されています。
高度な萎縮がある場合は、除菌後も定期的な経過観察が必要です。
萎縮した胃は元に戻りますか?
萎縮の進行を止めたり、一部回復させたりすることは可能ですが、完全に元に戻ることは難しいです。
回復の可能性がある場合
ピロリ菌除菌を行うことで、萎縮の進行を抑えたり、一部回復することが報告されています。
ただし、高度に萎縮した胃粘膜は完全には元に戻らないため、胃がんのリスクを考慮して定期的な検査が推奨されます。
食生活の改善や抗酸化食品の摂取によって、胃粘膜の状態を整えることは可能です。
萎縮性胃炎の胃カメラは保険がききますか?
保険適用の対象になる場合があります。
保険適用となるケース
- ピロリ菌感染が確認されている場合(胃がんリスクが高いため)
- 胃の不調(胃痛、胃もたれ、貧血など)の症状がある場合
- 過去に胃がんの家族歴があり、医師が必要と判断した場合
自由診療になるケース
- 健康診断や人間ドックで「精密検査の必要なし」と判定された後の自己判断での検査 特に症状がないのに、念のため受ける場合
保険適用の可否は、医師の判断によるため、まずはクリニックや病院で相談することをお勧めします。
萎縮性胃炎で食べてはいけないものは?
胃の炎症を悪化させる食品は避けたほうがよいです。
自由診療になるケース
- 刺激が強いもの
- 唐辛子、コショウ、わさび、からしなどの香辛料
- 酸味が強い食品(レモン・酢・柑橘類の過剰摂取)
- 胃酸分泌を増やすもの
- アルコール(特に焼酎・ウイスキーなどの強い酒)
- コーヒー、紅茶、緑茶(カフェインを含む飲料)
- チョコレート(カフェインと脂質が多い)
- 脂肪分が多い食品
- 揚げ物(天ぷら・フライ・唐揚げ)
- こってりしたラーメン・ピザ・クリーム系の料理
- 加工食品・発酵食品(塩分が多いため)
- 漬物、梅干し、味噌汁(過剰摂取はNG)
- 加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージ)
萎縮性胃炎のステージ分類は?
萎縮性胃炎のステージ分類にはいくつかの方法がありますが、日本では「木村・竹本分類」と「京都分類」が主に用いられます。
木村・竹本分類(内視鏡で萎縮の広がりを評価)
- C型(C-1~C-3):萎縮が胃の内側に限局(リスク低め)
- O型(O-1~O-3):萎縮が広範囲に進行(リスク高)
※O-2以上は胃がんリスクが高く、定期検査が必要!
京都分類(ピロリ菌感染を考慮)
- Grade 0:萎縮なし(ピロリ菌未感染)
- Grade 1~2:軽度~中等度の萎縮(リスク中)
- Grade 3~4:広範囲の萎縮(リスク高)